日常生活において、掃除と清掃という言葉は私たちの周りで頻繁に使われていますが、これらの言葉には微妙な違いが存在します。
何気なく使っているかもしれませんが、実はそれぞれが異なるアプローチを指しています。

この記事では、辞書の説明と歴史的背景を通じて、掃除と清掃の本質的な違いに迫ってみましょう。

掃除と清掃の違いは、「綺麗に」掃除するかどうか!三国志から読み解く違い

辞書における掃除と清掃の違いとは

掃除と清掃、これらの言葉は日常的に使用されるものの、実際の意味や使用法には微妙な違いがあります。
辞書によれば、掃除と清掃にはどのような違いがあるのでしょうか。
デジタル大辞泉と広辞苑から読み解きます。

掃除はゴミや埃を掃いたり拭いたりすること

デジタル大辞泉 では、掃除は以下のように説明されています。

1 はいたりふいたりして、ごみやほこり、汚れなどを取り去ること。
「庭を—する」「ふき—」

2 社会の害悪などを取り除くこと。
「政界を—する」

そして広辞苑では、以下の通りです。

①ごみやほこりをはいたりふいたりして取りのぞき、清潔にすること。
比喩的に、害悪を一掃すること。
「部屋をきれいに―する」「―機」
②便所の糞尿を汲み取ること。

どちらも、ゴミや埃を掃いたり拭いたりすることを掃除と呼んでいます。
デジタル大辞泉では、概念的な社会の汚れをとりのぞく事も掃除と呼んでいます。

漢字から見ても、「掃いて除く」なので、結果に関わらず掃いたり拭いたりしてゴミやほこり、汚れを取り除く行動をすれば掃除と考えることができるでしょう。

清掃は綺麗に掃除すること。

デジタル大辞泉 では、掃除は以下のように説明されています。
きれいに掃除すること。
「室内を—する」「—当番」

そして広辞苑では、以下の通りです。

きれいに掃除すること。
さっぱりとはらい除くこと。
「校庭を―する」

どちらも、綺麗に掃除することが清掃だと説明しています。

漢字から見ると、「清く除く」なので、「清=きれい」が含まれています。
ゆえに、綺麗に掃除することが清掃と言われたら納得できるでしょう。

重要な違いは「綺麗に」掃除するかどうか。

以上の結果から、掃除と清掃の違いは「綺麗に」掃除するかどうかです。
たとえば、雑に埃をはたくだけだと「掃除」と言います。
埃を残さず、綺麗に見えるように掃除すると「清掃」と呼ぶことが可能です。

中国の三国志と日本の平安時代から読み解く違い

これらの言葉の違いを理解するために、歴史的な側面からも読み解いて行きましょう。

日本の平安時代や中国の三国志時代においても、掃除と清掃の概念は存在しました。
しかし、その当時の文化や社会状況により、それぞれの言葉のニュアンスが異なっていたことが考えられます。

熟語の成り立ちは大きく分けて3種類ある

漢字二文字で構成される熟語については、中国から輸入されたもの、日本で独自に作られたもの、近代に日本から中国に輸出したものがあります。
「掃除」「清掃」はどちらも近代以前の中国で使われていたものであることから、中国から輸入されたものと推測できるでしょう。

古代の日本における「掃除」と「清掃」

日本大百科全書によれば、平安時代の日本は掃除や清掃という言葉はあまり使用せず、「清める」「掃く」という言葉を使っていたそうです。
恐らく、「清める」が「清掃」として現代で使われ、「掃く」という言葉が「掃除」に置き換わったのでしょう。

ただ、「清める」という言葉に関しては神道的な「穢れ」を払う概念に使われることが多いため、現代において社会的な「汚れ」をはらうことを「掃除」と表現することと意味が逆転しているのは興味深い部分です。

古代の中国における「掃除」と「清掃」

「掃除」「清掃」の輸入もととなる中国では、南北朝時代に賈六傑が編纂した『斉民養書』において「掃除sǎo chú」が、“正月上辛日,埽除韭畦中枯葉(最初の月の1日に、ネギの花壇の枯れた葉をとりのぞく。
)”として「とりのぞく」という意味で使われています。

また「清掃qīng sǎo」は、三国志·魏志において“清埽所灾之处,不敢於此有所立作,萐莆、嘉禾必生此地,以报陛下虔恭之德(清堤が影響を受けるところでは、私はあえてここに何も設立しない。
)”のなかで、「なにもない」という意味で使用されています。

中国語では「清掃」は「徹底的に掃除すること」と説明されており、日本における「綺麗」という主観的表現より、「何もない」という客観的事実が重視されていたことが推察できます。

以上のことから、日本に「掃除」や「清掃」が中国から輸入され、近代にかけて既存の日本語と混ざり合い、客観的な表現からより主体的表現に移り変わったことが考えられるでしょう。

言葉の歴史的な側面で見れば、「徹底的に何もない状態にすること」が清掃ということも言えます。

清掃業における掃除と清掃の使い分け

近年では、清掃業においても「掃除」と「清掃」の使い分けが重要な役割を果たしています。
たとえば、日常的なオフィスや家庭内では、掃除の作業を通じて基本的な清潔さを保つことが求められます。

一方で、病院や工場など特定の環境では、清掃がより徹底的に行われ、衛生基準を満たすことが不可欠です。

結果的に、誰でもできるような掃除が「掃除」と表現され、プロが行う掃除が「清掃」と表現される傾向にあります。

「清掃」を求めるならプロに頼もう

清潔な環境の維持は、健康や快適さにとって重要です。
特に、清掃が求められる状況では、プロの清掃業者に頼ることが賢明です。
専門的な知識と装備を備えており、徹底的な清掃を実施して環境を安全かつ清潔に保つ手伝いをしてくれます。

こうした掃除と清掃の違いは、単なる表面的な整理から、深層まで徹底的に環境を整える点にあります。
どちらも重要な役割を果たしており、状況に応じて適切なアプローチを選ぶことが大切です。